SEP. 26 2025
集団療育の中で「その子らしさ」を大切にするということ

お子さんが通う療育の場では、集団での活動がよく行われます。食事の時間や掃除の時間、またプログラムなどをみんなで楽しむことは、社会性や協調性を育てる大切な時間です。しかし「みんなと同じようにやること」が重視されすぎると、お子さん一人ひとりのペースや特性が見えにくくなることもあります。そこで大切になるのが「集団療育でありながら個を大切にする」という考え方です。
子どもたちは本当に一人ひとり違います。大きな声で歌うのが大好きな子もいれば、音が苦手で耳をふさぎたくなる子もいます。活動にすぐに入れる子もいれば、まず様子を見てから安心して少しずつ参加する子もいます。大人から見ると「ちゃんとやっていないように見える」ことも、実はその子にとって必要なペースで関わっているだけかもしれません。大切なのは、どんな形であっても「その子なりに参加している」ということを認める姿勢です。
療育の現場では、同じ活動の中でも取り組み方に工夫がされています。例えば製作の時間、細かい作業が好きな子はハサミやのりを使い、感覚遊びを好む子は絵の具やシールを使う。出来上がるものは違っても、「作る楽しさを味わう」という経験はみんなに共通します。これは「同じものをやる」ことよりも、「同じ経験を得る」ことを大切にしている例といえるでしょう。
また、集団の中にあえて「個の時間」を作ることもあります。全体でルールを確認したあと、それぞれのペースで数分取り組み、最後にみんなで見せ合う。そうすることで「一緒にやった」という安心感と「自分らしくできた」という達成感の両方を味わうことができます。
保護者の方の中には「ちゃんとできていないのでは…」「みんなと違って心配」と感じられる方もいるかもしれません。でも、集団療育の本当の目的は「みんなと同じようにする練習」ではなく、「みんなの中で自分らしく過ごす練習」です。その子らしい関わり方を認めてもらえる経験は、自信につながり、やがて「自分を大切にしながら他の人とも関われる力」へと育っていきます。
子どもたちが違っていることは決して弱点ではありません。むしろ、集団の中で互いの違いを知り、尊重し合うことは、子どもにとってかけがえのない学びになります。療育の場は、その第一歩を安心して踏み出せる場所です。どうぞ、お子さんが「自分らしい形で参加している」姿を温かく見守っていただければと思います。