COLUMN活動報告

NOV. 07 2025

脳とホルモンを考える 家庭でできる集中力アップの工夫

「集中できない」「気が散りやすい」といった悩みは、発達障害など特性のあるお子さんによく見られます。環境や支援はもちろん大切ですが、近年の脳科学では、集中力や注意力は、ホルモンバランスや栄養状態とも深く関わっていることが分かってきました。
集中力を支える脳の働きには、ストレスや目覚めに関わる「コルチゾール」や、代謝に関わる「インスリン」などのホルモンが影響しています。これらが乱れると、気持ちの切り替えや安定が難しくなることがあります。実際、朝のコルチゾールのリズムが乱れた子どもでは、「計画性」や「集中力」(実行機能)が下がるという研究結果も報告されています。
では、難しい特別な療法ではなく、ご家庭で今日からできる「集中力の土台」づくりには、どんな工夫があるでしょうか。それは、「食事」「睡眠」「運動」という基本の生活習慣を整えることです。

1.脳が喜ぶ「食事」と「栄養」
食事は、脳に安定したエネルギーと必要な材料を供給する最も大切な土台です。
(1) 朝食を「活動モード」のスイッチに
朝食は、血糖やホルモンのリズムを整え、脳を「活動モード」に切り替える重要なスイッチです。
 •工夫: ご飯やパンだけでなく、卵、魚、ヨーグルトなど、たんぱく質を含むメニューを意識しましょう。たんぱく質は血糖値の急上昇を防ぎ、エネルギーを安定させます。
(2) 集中力を支える栄養素をプラス
青魚やナッツ類に多いオメガ3脂肪酸は、神経細胞の働きを助け、集中力をサポートすると言われています。また、鉄、亜鉛、ビタミンB群などの栄養素は、脳の情報をスムーズに伝える物質(神経伝達物質)の合成に欠かせません。
 •工夫: サバやイワシなどの青魚を週に数回取り入れたり、偏食がある場合は取り入れやすい形で必要な栄養素を補給する意識を持ちましょう。
(3) 血糖値の乱高下に注意
砂糖の多いお菓子やジュースは、血糖値の急激な上がり下がりを起こしやすく、これがイライラや集中力の低下につながることがあります。
 •工夫: おやつの時間を決め、食事全体とのバランスを取ることが大切です。

2.ホルモンを整える「睡眠」と「運動」
食事以外の生活習慣も、ホルモンバランスを整える重要な要素です。
(1) 規則正しい睡眠で体内時計をリセット
質の良い睡眠は、目覚めや眠りをコントロールするホルモン(コルチゾールやメラトニン)のリズムを整えます。
 •工夫: 朝日を浴びて体内時計をリセットし、就寝時間をできるだけ一定に保つことが基本です。
(2) 適度な運動でストレスを調整
体を動かすことは、ストレスホルモンを調整し、溜まった気持ちをスッキリと切り替えるのに役立ちます。
 •工夫: 公園遊びや軽いかけっこなど、外で体を動かす機会を積極的に作りましょう。

最後に
お子さんの集中力や落ち着きを育むための第一歩は、「食べる・眠る・動く」という基本の土台を整えることです。特別な療法ではなく、日々の生活の中で少しずつ整える意識を持つことが、子どもの脳と心を支える最も大切な力になります。
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参考論文
1.Wagner, S. L., Cepeda, I., & Ruttle, P. L. (2016). Higher cortisol is associated with poorer executive functioning in preschool children: The role of parenting stress, parent coping and quality of daycare. Early Child Development and Care, 186(12), 1932–1947. (PMC4833630)
2.Georgieff, M. K., Ramel, S. E., & Cusick, S. E. (2018). Nutritional influences on brain development. Acta Paediatrica, 107(8), 1310–1321. (PMC6045434)

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